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Blog_マメ知識

「ハリケーンとタイフーン(台風)って基本同じだよね?」

Hurricane and Typhoon

アメリカの大西洋で発生するハリケーンのシーズンは、正式には6月1日から11月30日までですが、10月半ばを過ぎると、大型のハリケーンがアメリカ本土を直撃する可能性もぐっと低くなります。

毎年ハリケーンの被害を被る東海岸や南部の沿岸地域とは違い、ここカリフォルニ州ではハリケーンの被害を直接受けることはありませんが、ハリケーンに度々襲われるマイアミに住む友人からは、ハリケーンの凄まじさも聞いており、全くの他人事とも思えません。

周知のとおりアメリカではハリケーンに名前が付けられますが、

今年は熱帯性低気圧(Tropical Cyclone)の発生数がとても多く、アルファベットのAから順に始まる熱帯低気圧リストにある21(26 字中U、Q、X、Y,Zを除く)の名前を全て使い切ってしまいました。

ニューオリンズを壊滅状態に落とし入れたハリケーン・カトリーナ(Katrina)をご記憶の方も多いかと思いますが、他にもリタ(Rita)やウィルマ(Wilma)など大型のハリケーンが連続して発生した2005年以来、史上2度目の熱帯性低気圧へのギリシア文字使用となりましたが、

現在デルタ(Delta)までのギリシャ文字4つも使われ、2020年は10月半ば時点で既に計25個のハリケーンを含む熱帯性低気圧に命名がされています。

OSAクン
OSAクン

Deltaの次はEpsilon、その次はZeta、Eta…とそれ以上分からないので、そろそろ打ち止めにして欲しい・・・

先日家族でハリケーンのニュースをテレビで見ていた時に、娘から「ハリケーン(hurricane)とタイフーン(typhoon)って同じだよね?」と不意に聞かれ、

基本同じで、発生場所の違いでアメリカではハリケーン、日本ではタイフーン(台風)って呼んでいるんだよ」と、昔誰からか聞いたの思い出してとっさに回答したものの、100%自身がなかったのでこそっと調べてみました。😨

ハリケーンとタイフーンは同じ?

アメリカ国立海洋局(National Ocean Service: NOAA)によると、

  • ハリケーンもタイフーンも同じTropical Cyclones(熱帯低気圧)である
  • 熱帯低気圧の最大風速が74マイル/時間(74mph)を超えるとハリケーン、タイフーン、またはサイクロンとなる
  • その発生場所、正確には位置するロケーションにより、ハリケーン、タイフーン、またはサイクロンと呼称が変わる
    • ハリケーン:北大西洋、北太平洋中央部、北太平洋東部
    • タイフーン(台風) : 北太平洋西部(日付変更線より西側)
    • サイクロン:南太平洋、インド洋

Red Crossサイトで見つけた地図を見ていただくと、もう少し分かりやすいと思います。

 Source:American Red Cross                                                  

ハリケーンとタイフーン、それからサイクロンも”基本”同じ気象現象、最大風速が74mphを超える熱帯低気圧で、位置する場所により呼称が変わる

OSAクン
OSAクン

お父さん当たってて良かったね・・・

ハリケーンからタイフーンへ

位置により呼称が変わるとのことですが、実際にハリケーンからタイフーンに呼称が変わることもあります。

2014年に東太平洋で発生したハリケーン・ジェヌヴィーヴ(Genevieve)ですが、太平洋を西に進み180度経線の日付変更線を超えたため、ハリケーン・ジェヌヴィーヴからタイフーン・ジェヌヴィーヴに呼称が変わりました。

また、

2015年にハワイ島近辺で発生したハリケーン・キロ(Kilo)ですが、西側半分が日付変更線を超えてタイフーン・キロとなったと思いきや、東側半分は日付変更線を超えずにハリケーン・キロのままでしばらくの間その付近で停滞、その後やっとタイフーン・キロとなりました。

タイフーン=台風?

NOAAによると、「熱帯低気圧の最大風速が74マイル/時間(74mph)を超えるとハリケーン、タイフーン(台風)、またはサイクロン」となるとのことでしたが、

74mphをメートル換算すると119,091m/hで、それを秒速に換算すると33.08m/sとなり、気象庁の台風の定義である風速17m/s(34ノット、風力8)以上と大きく異なります。

「あれ、おかしいな? もしかするとハリケーン=タイフーン=台風ではないのか?」と思い、

今度は日本の気象庁にあたるアメリカ国立気象局(National Weather Service: NWS)のサイトで再度ハリケーンの定義を確認したところ、

Source : National Weather Service                     

となっており、

日本の台風はハリケーンやタイフーンと少し定義違い、台風にはアメリカで名前付けがされる最大風速39mph以上のTropical Stormも含まれることになります。

OSAクン
OSAクン

マイル、メートル、knot(ノット)と3つの単位が乱れて混乱するね。特にノットなんか使った時ないし・・・

整理のために、調べた情報をまとめてみました。

アメリカ日本最大風速(m/s)最大風速(mph) (ノット)
Tropical Depression熱帯低気圧<17m/s<39mph (34ノット)
Tropical Storm台風17-33m/s39-74mph (34-63ノット)
Hurricane(=Typhoon, Cyclone)台風33+m/x74+mph (64+ノット)
OSAクン
OSAクン

つまり、正確には台風=タイフーンではなく、台風=タイフーン + トロピカルストームということだね・・・

気象庁のサイトでは、台風の英文階級ではTropical StormとHurricaneの間にSevere Tropical Stormなるものがあるようですが、少なくともアメリカでは日常的には使用してないようなのでここでは省略しています。

Typhoonの語源は?

「津波」が「tsunami」となったように、「台風」が「typhoon」となったのだろう〜?と思いtyphoonの語源を調べてみたところ、実は逆に英語のtyphoonの音訳が台風となったようです。(日本語の「台風」と英語の「typhoon」はどちらが先にできた言葉か)

OSAクン
OSAクン

ふ〜ん、たまたまだろうけど、台風というぴったりの当て字がよくあったね・・・

本当のtyphoonの語源は少し複雑で、と言うよりは諸説はあるもののはっきりしておらず、Wikipediaによると以下の説があるそうです。

  • ギリシア神話に登場する最大最強の怪物・テュポン (τυφων, Typhon) に由来し「typhoon」となった
  • アラビア語で、嵐を意味する「طوفان (tufan)」が「typhoon」となった
  • 中国広東省で、南または東の激しい風のことを外国からの風のとして大風(ターイフォン)といい、その後、西洋に伝わり、ギリシア神話のテュポンの影響でギリシャ式の”typhoon”というつづりで書かれるようになった

ハリケーンの回転方向

ハリケーン(タイフーン、台風、サイクロンも同じ)の回転方向ですが、北半球で発生した場合は反時計回り、南半球で発生した場合は時計回りと、回転方向は常に一定です。

ハリケーンの回転方向を決定するのが、19世紀のフランスの科学者Gaspard Coriolis 氏が定理化したコリオリの力(force de Coriolis)です。

とてもよいビデオを見つけましたので、まずは以下のYouTubeビデオをご覧ください。

地球は球体をしており東向きに自転をしています。地軸の北方向を正とすると右手回りとなります。 

経度0度の赤道の自転速度が一番速く、北半球では北に行くほど速度が遅くなり、北緯90度の北極点が一番遅くなります。

南半球ではその逆で、赤道から南に行くほど速度が遅くなり、南緯90度の南極点が一番遅くなります。

ですので、

北半球で赤道から北方向に吹く風は、風は赤道での速度で進みますが、緯度が高くなり北に行くほど自転速度が遅いので、地上は風の速度より遅いために、速度の速い風は進行方向の右、つまり東方向に曲がることになります。

逆に北から赤道方向の南に吹く風はそれとは逆で、緯度が低い南に行くほど地上の速度が速いため、北からの風は地上の速度より遅れ進行方向に対して右へ、つまり西方向に曲がることになります。

南半球で赤道から南方向に風が吹くと、風は赤道での速度で進みますが、緯度が高くなり南に行くほど自転速度が遅く地上は風の速度より遅いために、速度の速い風は進行方向の左、つまり東方向に曲がることになります。

逆に南から赤道方向の北に吹く風はそれとは逆で、緯度が低い北に行くほど地上の速度が速いため、南からの風は地上の速度より遅れ進行方向の左へつまり西方向にずれることになります。

このコリオリの力が、外からのハリケーンの中心である低気圧に吹きこむ風にも作用し、

北半球ではハリケーンの中心に南から入ってくる風は右へ、つまり東方向にずれ、北から中心に入ってくる風は右へ、つまり西方向にずれることにより、反時計回りの回転となります。

南半球ではその逆で、ハリケーンの中心に北から入ってくる風は左へ、つまり東方向にずれ、南から中心に入ってくる風は左へ、つまり西方向にずれることにより、時計回りの回転となります。

OSAクン
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ちょっと分かりにくかっだけど、ビデオと合わせて理解できたよ・・・

ちなみに、

このコリオリの力はTornado(トルネード:竜巻)にも作用し、北半球での大型の竜巻もたいていは反時計回りとなるそうです。

おわりに

「ハリケーン(hurricane)とタイフーン(typhoon)って同じだよね?」の質問に対しては、

アメリカ的に大雑把に言うと、”基本”ハリケーン、タイフーン、台風、サイクロンも熱帯低気圧なので同じ、発生場所だけの違い

ただし、

正確に言うとタイフーン=台風ではなく、台風=Typhoon +Tropical Stormとなります。

アメリカのハリケーンシーズン、日本の台風シーズンもほぼ終わり近くですが、今年はコロナでいっぱいいっぱいで、加えてアメリカでは西海岸の山火事の被害が甚大でまだ収まってもおらず、この先何事も起こらずハリケーン・台風シーズンが終わることを願うばかりです。

Stay safe and healthy! 👍