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Blog_アメリカ生活

裏庭に「片角のシカ」がやって来た!

立派な角を持ったお兄ちゃんシカ

California州のSF郊外にある我が家の裏庭に、先週兄弟と思われる(?)2頭の雄シカがやって来ました。(正確に言うと、裏庭ではなくて、我が家の小さな裏庭の裏にです・・😅)

Californiaにはシカが沢山おり、拙宅の周りにも時々現れるので、最初は「立派な角を持った雄ジカが2頭やって来て、我が家の目の前でゆっくり休んでいる・・・」程度で、特に気にしていませんでしが、

よく見るとお兄ちゃん(?)シカはとても立派な角を持っていますが、弟くんは片角で、しかも足に怪我をしているようで、びっこを引いていました。

時々ニュースで目撃情報が伝えられる、「マウンテンライオン」と呼ばれるクーガーかコヨーテに襲われて角を失くしたのかな・・・?

可哀想なこの片角の弟くんのことが気になり、思わずiphoneを取り出し撮影し、今までは特に気にしていなかった「シカ」について調べてみました。

シカに関する豆知識

少々古いデータになりますが、アメリカには約3千300万頭のシカが生息しています。アメリカの人口が約3億3千万人ですので、なんと人口の約10分の1がシカがいることになります。California州にも約50万頭のシカが生息していますが、近年の山火事や干ばつの影響で、その数は減少傾向にあるようです。

アメリカのシカの多数が、大きく分けると以下のWhite-tailed deer (オジロジカ)Mule deer (ミュールジカ)の2種類からなり、California州には、Mule deerの亜種であるCalifornia mule dearとBlack-tailed deerが生息しています。

  • White-tailed deer (オジロジカ) : アメリカで最も多いシカで、北はカナダから南米まで広く生息。ロッキー山脈から東側に多く生息しており、Califoria州にはいない。
  • Mule deer (ミュールジカ) : 北アメリカ西部でみられ、北極圏からメキシコ北部の広範囲に生息。Mule (ラバ)のような、大きな耳を持っていることが名前の由来。
    • Black-tailed deer (オグロジカ)
    • California mule deer (カリフォルニアミュールジカ)

シカの角:失った角はまた生えて来る?

角が雄シカ特有なものであることは皆さんご存知でしょうが、あの立派な角はまた生えてくる、と言うより、「シカの角は毎年生えわる」のを知っていますか?

シカの雄は毎年春に古い角を落とし、夏にかけて新しい角を伸ばします。シカの角は骨でできており、成長中の角は袋角ふくろづのと呼ばれ、velvet(ベルベット)と呼ばれる薄い皮膚と血管によって覆われています。中国では疲労回復、精力増進などに調合される「鹿茸ろくじょう」として古くから知られています。

Source: MISSISSIPPI STATE UNIVERSITY DEER ECOLOGY & MANAGEMENT LAB
シカの角の成長サイクル
  • 2月~3月
    落角おちつの、そして新しい角の成長開始

    古い角を落とし、pedicle(ペディクル)と呼ばれる、頭蓋骨上部の突起がベースとなり、そこから新しい角の形成が始まります。

  • 4月~5月
    Velvet(ベルベット)に覆われた袋角の成長

    この時期の角は柔らかで温かく、角の成長もゆっくりです。

    5月~6月は新しい命の誕生期でもあります。 雌シカは普通1〜2匹の子を産みますが、3匹を産むこともあるそうです。

    ちなみに、「バンビ」で思い出す、鹿の子かのこ模様という背中の白い斑点は、生後半年程で夏毛から冬毛に生え変わる際に消えてしまいます。この鹿の子かのこ模様がカモフラージュとなり、外敵から身を守るのに役立ちます。

    生まれた年には角は生えませんが、1才を迎えた雄の子ジカにも角が生え始めます。

  • 6月~7月
    袋角の本格伸長期

    Velvet(ベルベット)から血液、酸素、栄養素が角の運ばれ、この時期角は大きく伸長し、成人したシカでは1週間に2 inches (約5cm)も伸びます。
    但し、この時期の角はまだ柔らかく脆いです。

    首の骨や筋肉の成長に合わせて、角も年ごとに大きくなり、5~6才でピークを迎えます。

  • 8月~9月
    角の成長停止→骨化→破角

    袋角への血液の供給が少なくなるにつれ角が固くなり始め、角の成長が停止します。角が骨化すると、表面のvelvet(ベルベット)と呼ばれる皮膚が剥がれる破角が起こり、シカの角が完成します。

    この時期、雄シカが自らの角を樹木にすりつけて、velvet(ベルベット)を剥がす「シカの角こすり」と呼ばれる行為がみられますが、実際雄シカの多くは、velvet(ベルベット)が既に剥がれた後にも角こすりを行っており、それは繁殖期のなわばりを主張する行動のようです。

  • 9月~11月
    シカの繁殖期

    ご多分に漏れず、ルックスはシカの世界でも大事なようで、立派な角をもった雄シカがモテるようです。シカの世界は一夫一妻ではなく、雄シカには家族の概念もなく、この時期の雄シカは、寝る間や食べる間も惜しんで、次から次へと雌シカを追い求めるようです。実際繁殖期の終わり迄に、野生の雄シカは体重の25%を失うそうです。

    「バンビ」では、お父さんが群れのリーダーで、バンビ家族を守っていたのに・・・

    繁殖期のシカは活動的となり、人間との遭遇とも多くなり、自動車事故等が増えるそうですので、シカの生息エリアにお住まいの方はご注意を!

裏庭に来たシカ

品種は?

White-tailed deer (オジロジカ)はCaliforniaには生息していないので、「Mule deer (ミュールシカ)であることは間違いないが、果たしてBlack-tailed deer (オグロジカ)とCalifornia mule deer(カリフォルニアミュールシカ)のどちらであろうか?」と調査をしたところ、体のサイズや耳の形等に違いがあるようなのですが、共にMule deerの亜種なので写真を色々みても見分けが難しく、一番分かりやすそうなのが、尻尾の違いがあることが分かりました。

Well, they are similar in appearance, but in the case of California Mule Deer, they generally have a white tail that ends in a black tip, like a black tassel at the end. In the case of pure Black-tailed Deer, not only is their entire tail black, but a dark stripe extends up the tail and all the way along their back.

TEHACHAPI NEWS
  • 尻尾が白くて、先端だけ黒いのがCalifornia mule deer
  • 尻尾が黒くて、黒い縞模様が背中にかけて続いているのが、Black-tailed deer

尻尾全体が黒いので、Black-tailed deer(オグロジカ)で間違いないね・・・

年齢は?

雄シカの年齢は、ボデイサイズ、そしてから推察できます。角は年齢と共に大きくなり、枝分かれが増えます。

Source: outdooralabama.com (white-tailed deer)            

お兄ちゃんの角をみると、とても太く立派で、3才位ではないかと・・・

弟くんも角も来年は大丈夫?

撮影したビデオをよく観ると、弟くんには片角と足に怪我をしていること以外にも、異変があることに気がつきました。

  • 正常と思われた左頭部の角ですが、お兄ちゃんの角と比べると、おかしな形をしています。また、実際には片角ではなく、もう片側の右頭部にも小さな角がみられます。
  • 大きい方の角がある左側の首から肩に掛けて、かなり大きな傷跡が残っています。

これから繁殖期が訪れますが、「片角で足にも怪我をしているので、今年は弟くんはもてないだろう。でもシカの角は毎年生え変わるので、来年には怪我も直り、お兄ちゃんのような立派な2本の角が生え、兄弟揃ってモテモテになるであろろう・・・」と思っていましたが、心配になり片角のシカに関しても調べてみました。

片角または変形角の原因

片角や角の変形は時々みられる事象であり、それには大きく分けると2つの原因があるそうです。
1つ目は遺伝的なもので、2つめは怪我が要因となっている場合です。弟くんはびっこを引いており、首から肩にも古傷があるので、それらの怪我と関係があるのかもしれません。

University of Missouriの調査によると、体の怪我と角の成長には関係があることが分かりました。

  • 繁殖期に角を使った雄シカ同士の戦い時に、pedicle(ペディクル)と呼ばれる、頭蓋骨上部の角が生える台座にダメージを負ってしまった。Pericleの大きな怪我は、その角の生え方に影響を与えます。また、落角が綺麗にいかず、pedicle(ペディクル)が傷ついてしまうケースもあるそうです。
  • 春から夏にかけて、角が成長する袋角のvelvet(ベルベット)が傷ついてしまった。Velvet(ベルベット)は、成長過程で骨子化していない柔らかい角に、血液や栄養を運ぶ皮膚で、velvet(ベルベット)が傷つくと角の成長に大きく影響がでます。
    通常は翌年の生え変わった角の成長には影響はないそうですが、velvet(ベルベット)の傷から感染症を起こし、健康状態に大きな問題をもたらすケースもあるそうです。
  • 怪我が角の成長や変形に影響を与えます。因果関係は科学的に証明されていませんが、本来角にいくべき栄養が、怪我を治すのに使われるからのようです。また、同じく生物学的なメカニズムは解明されていませんが、怪我をした逆側の角に影響がでるようです。つまり体の左側に怪我をした場合は、右側の角に影響がでるようです。

    足に怪我をした場合はもう少し複雑で、前足の怪我は同じ側の角の成長に、後ろ足の怪我は逆側の角の成長に影響を与えるケースが多いようです。
    • 左前足の怪我→左側の角 / 右前足の怪我→右側の角
    • 左後ろ足の怪我→右側の角 /  右後ろ足の怪我→左側の角

弟くんの怪我と片角が関係しているのに間違いがないようだね・・・

弟くんの考察

弟くんの足の怪我は左足の前足で、加えて左側の首から肩にかけて大きな古傷があります。
足の怪我で一番多いのは、車との接触事故ですが、弟くんの首から肩に掛けての傷は、既に完治はしているようですが、車に接触したような傷にはみえず、何者かに噛まれたり引っ掻かれたような傷跡です。
それ故、片角と怪我の原因は、最近何者かに襲われて片角を失ったり、怪我をしたのではなく、

昨年の繁殖期に雄シカと戦い、相手の角でpedicle(ペディクル)や体を傷つけられた可能性がひとつ、

そしてもうひとつは、

幼少期にマウンテンライオンかコヨーテに襲われ、重症を負うものの命は助かった

ただ、繁殖期の雄シカは、雌シカや縄張りを争って戦いますが、相手を深く傷つけるまで戦うことはしないそうなので、やはりマウンテンライオンかコヨーテに襲われたのでは・・・?

何れにしても、びっこを引いている状態の左前足の怪我と左首から肩にかけての傷が、弟くんの両方 の角の成長に影響を与えていることは間違いなさそうです。

おわりに

大きな角を持った逞しいお兄ちゃんに比べて、どこか弱そうな片角の弟くんをたまたまみたことから、シカと弟くんに関して調査をしてみました。シカの角は毎年生え変わることから、最初は来年にはお兄ちゃん同様立派な2本の角を携えてまた現れるであろう・・・と期待をしましたが、

更に調べてみると、残念ながらそうではなく、来年も同じ状態が続くかもしれません。

足に怪我をしていることから、外的であるマウンテンライオンやコヨーテから狙われる可能性も高く、またこれから始まる繁殖期でもどうなるのか分かりません。

一方で、素人の推察に反し、来年には足の怪我も完治し、立派な2本の角をもったシカとして、また裏庭に遊びに来てくれるのでを待ちたいと思っています。

それ以前にも、またお兄ちゃんと現れてくれたら、角の成長の様子も含めてまたレポートします。

ところで、お兄ちゃん、弟くんと勝手に兄弟としましたが、この時期雄シカ同士が一緒に行動することは珍しくなく、実際には兄弟ではないかもしれません。

Good luck 弟くん!