世界保健機関(WHO)が3月にパンデミック宣言をしてから半年が過ぎましたが、ここ米国でも多くの人が外出を控える生活が続く中、eコマースサイトが好調です。
リーダーであるAmazonの第2四半期(2020年4月〜6月)の売上は、前年比40%アップの$88.9 billion (North America $55.4 billion + International $22.7 billion + AWS(Amazon Web Services) $10.8 billion)を記録しました。特にオンライングローサリーの売上は、前年と比べて3倍となりました。
$1 billionが10億だから、$1=105円とすると約9.3兆円・・・
四半期でこの売上とは、Amazonって無茶苦茶凄いね・・・
一方、Walmart(ウォルマート)の第2四半期(2020年5 月〜7月)は、売上は前年比5.6%アップの$137.7 billion(Walmart US $93.3 billion + International $27.2 billion + $16.4 billion)でしたが、注目すべきはeコマース部門で、Walmart USのオンラインセールスは前年比97%アップ、傘下のSam’s Clubのオンラインセールスも39%アップとなりました。
Walmartは四半期で約14.5兆円と、売上高はAmazonより全然上なんだ・・・
コロナ渦WalmartとAmazonの戦いが ますます激しさを増す中、Walmartがコロナの影響で延期となっていた「Walmart+ (ウオルマートプラス)」を、今週9月15日(火)に開始しました。
Walmart+ (ウォルマートプラス)とは?
Walmart+は、WalmartがAmazon Primeに対抗して始めた有料メンバーシッププログラムです。年会費は$98(月額$12.95/月)で、メンバーになると幾つかの特典があります。
$35以上の買い物で、当日デリバリーが無料となります。Walmartウェブサイト若しくはWalmart appから欲しい商品をカートに入れ、希望の配送時間を指定し(1時間単位)注文をするだけで、後はドライバーが玄関先に商品を届けてくれます。Walmartが取り扱う16万点以上のアイテムを、オンラインで購入し配送して貰えます。
Mobile Scan & Go (モバイル・スキャン&ゴー)
Walmart店舗にて、Walmart appを使用して、購入する商品のバーコードをスマホでスキャンし買い物カートに入れ、セルフチェックアウト時にQRコードをスキャンして支払いを済ませることができます。系列のSam’s Clubでは既にこのScan & Go導入しており、その簡便さから評判も良いようです。
Walmart+メンバーは、1ガロン(約3.8リッター)あたり5セントのディスカウントを受けられます。車種にもよりますがタンク容量14ガロンとして、ほぼ空のタンクを満タンにした場合、70セントのディスカウントとなります。ガロンあたりのガソリン価格を$2.5とすると2%引きとなります。
現時点では、WalmartとMurphyを合わせた1500カ所のガソリンスタンドでの利用が可能となりますが、近い将来には、全米で518カ所あるSam’s Clubのスタンドでの利用も可能になるようです。
ガロンあたり5セントだと割安感があまりないのが正直なところ・・・
ちなみに、これまでWalmartがオファーしていた、$30以上の買い物で配送が無料となるDelivery Unlimitedのメンバーは、自動的にWalmart+メンバーに移行されました。
Walmart+ vs. Amazon Prime
特典が少ないように思えるWalmart+ですが、Amazon Primeとの比較をしてみました。
Walmart+ | Amazon Prime | Winner | |
---|---|---|---|
年会費 | $98 | $119 | Walmart |
月額会費 | $12.95 | $12.99 | 引き分け |
Shipping(<$35) | 有料($5.99) | 無料 | Amazon |
Shipping(≧$35) | 無料 | 無料 | 引き分け |
Same Day Delivery | $35以上で可能 | $35以上で可能 | 引き分け |
ガソリン割引 | 5¢/ガロン | N/A | Walmart |
Video Streaming | N/A | 数千タイトル以上無料 | Amazon |
Music Streaming | N/A | 200万曲以上無料 | Amazon |
Digital Book&Game | N/A | 一部無料 | Amazon |
店舗特典 | Scan & Go | Whole Foodsで割引有り | 引き分け |
クレジットカード | 有り(5%キャッシュバック) | 有り(5% rewards) | 引き分け |
Free Trial | 15 days | 30 days | Amazon |
その他 | N/A | 無制限Photo Storage | Amazon |
Walmart+の年会費がAmazon Primeと比較すると安いこと、そして僅か5¢/ガロンのガソリン割引があることを除いては、Amazon Primeの方が遥かに特典が多いのは明らかです。
特に、
Amazon Primeには、VideoやMusic Streamingなどの多くのデジタルコンテンツが無料で含まれ、追加費用を払えば最新のコンテンツ含め、更に多くのコンテンツにアクセスができるのは、Free Deliveryと並んでAmazon Primeの大きなセールスポイントで、それがWalmart+に含まれていないのは、Walmart+にとって大きなマイナスと言えます。
後発なんだから、Amazon Primeを明らかに上回る特典がないとちょっとな〜・・・
現時点での個人的な結論ですが、
Walmartがメインのグローサリーショップで、頻繁に宅配を頼む人には明らかにメリットがあると思います。加えて、Walmart/Murphyのガソリンスタンドを常に利用する人も検討しても良いでしょう。しかし、それ以外の人には、現時点で$98の年会費を払ってまで加入する価値があるメンバーシップではないように思えます。
何れにしても、Walmart+に興味のある方は、まずお住まいの場所がFree Unlimited Deliveryの対象となっているかを確認した上で、15日間のFree Trialをしてみてはいかがでしょうか?
ちなみに、わたしの住むSF郊外の街は、Free Unlimited DeliveryはNot Availableとでてしまいました・・・
なぜこのタイミングでWalmart+を始めたのか?
あまり魅力がないようにみえるWalmart+ですが、Walmartがなぜこのタイミングで、このメンバーシッププログラムを提供し始めたのでしょうか?
Walmartの売上の中でグローサリーは56%を占め、Sam’s Clubに至っては売上の60%がグローサリーとなっています。
Walmartの一番の強みは、系列のSam’s Club(599店舗)などを加えると、5300を超える実店舗です。 Amazonも物凄い勢いで人を採用し、現在全米で約110あるFulfillment Centerと呼ばれる流通倉庫を増やしはしているものの、加えて全米で約500店舗あるWhole Foodsのネットワークを利用しても、Walmartのネットワークには敵いません。
Walmartはこの実店舗を最大限に生かして、生鮮品を含めたグローサリーの宅配を有効且つ迅速に行い、オンライングローサリー販売でも先を行く、Amazonのシェアを奪おうとしています。何といっても一番の売りは当日配送で、Amazonが当日配送サービスをできない地域も含めて、店舗数を生かしての当日配送を全面に打ち出し、グローサリーではeコマースでもAmazonに打ち勝つために相当の力を注いでいます。
WalmartとAmazonの空での戦い
いかに安く、早く、安全に消費者へ商品をお客に届けられるかが、つまり配送の分野が、今後のWalmartとAmazonの戦いにおいて、大きなカギのひとつになると思います。
それを実現させるためのひとつの手段となるであろう、WalmartとAmazonの空での戦い、つまりドローンを使用した無人配送についても、ここにきてて更にヒートアップしてきました。
CNBCによると、8月31日(月)Amazonは米国連邦航空局(Federal Aviation Administration: FAA)より、Prime Airによるドローン配送認可を取得しました。これにより、AmazonはPrime Airによるお客へのドローン配送の試験運用が可能となりました。現在のドローンの能力は、航続距離15 mile(約24km)、商品の積載重量は5 lbs(約2.3kg)で、Amazonはお客への30分以内の配送をドローンを使用して実現させたいとしています。
Amazonに先行されている感もありますが、Walmartもドローン配送に注力しています。Amazonのように自社開発をするのではなく、他社との提携によりそれを実現させようとしているようです。
9月9日(水)のWalmartのプレスリリースによると、イスラエル企業のドローンによる配送業務会社のFlytrex(フライトレックス)と提携し、North Carolina(ノースカロライナ)州のFayetteville(ファイエットビル)にてドローン配送を開始しました。Flytrexのドローンの航続距離は3.5 mile (約5.6km)、積載重量は6.6 lbs (約3kg)です。
また9月14日(月)には、南サンフランシスコに本社がある世界最大のドローン配送ネットワークを持つ、Zipline(ジップライン)との提携も発表しました。WalmartはZiplineの技術を使用して、Arkansas(アーカンソー)州北西部にあるWalmart本社近くで、ドローンによる配送の試験運用を開始します。Ziplineのドローンは飛行機型で、Walmartの店舗から半径50 mile (約80km)の広域をカバーできるそうです。
そして、その理由は・・・
Walmart+の特典を充実させるだけの時間がなく、コロナ渦急成長しているグローサリーのeコマースにてAmazonに後れを取らないためにも、まずは当日配送サービスを全面にだしWalmart+を開始し、且つAmazonが先行しているドローンによる無人配送に関しても、ドローン配送にて実績のあるFlytrexとZiplineとの提携を立て続けにWalmart+開始直前に発表し、「オンライングローサリー + 当日配送のWalmart」を世間にアピールしようとしたのだと考えられます。
現時点では、Walmart+自体は一部の人向けを除くと、特段魅力のあるメンバーシップとは思えませんが、恐らく近い将来にVideoやMusicのデジタルコンテンツサービスの提供を始め、その特典を段階的に追加することによって、当日配送以外のWalmart+の魅力をアピールしつつWalmart+メンバーを獲得する戦略だと思います。
Walmart vs. Amazonの行方は?
eコマースではAmazonが何歩も先を走ってはおりますが、2016年のJet.com買収後のWalmart.comの成長率はAmazonのそれを凌ぎ、近年は「マーケットプレイス」の強化・拡充も行い確実に成長しており、今やAmazonに続くeコマース No. 2となりました。
出品者(Seller)や取扱商品数を増やすために、Amazonが出品者に代わって、注文処理から商品配送など、販売に付随する業務を代行するサービスであるFBA(Fulfilled by Amazon)と似た、Walmart Fulfillment Service (WFS)も2020年の2月に開始しています。
そして今年の6月には、個人や小規模小売業者にeコマース用のプラットフォームを提供するShopifyとも提携し、2020年中に1200のShopify Sellerを追加するとコメントしています。
WalmartとAmazonの競争は、グローサリー、マーケットプレイス、そして配送の分野が中心となり、ますます激しさを増しておりますが、買い物大好きのわたしにとって、このBig 2が切磋琢磨することにより更なるサービスの拡充、そして価格競争によるセールやプロモーションが増えることを期待しています・・・
Happy Shopping! 😃