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【2020アメリカ大統領選】今回もトランプ氏にミラクルが起きるのか?

Trump vs. Biden

4年前の大統領選当日の2016年11月8日(火)、夜の8時頃だったか一緒に残業をしていた同僚が、帰り際に「トランプが優勢らしいよ」と言ったのを聞き、「え?まさか」と思いネットで調べたところ、確かにRed Stateが多く本当にトランプ氏が優勢なのを知り、衝撃を受けたのを記憶しています。

結局トランプ氏が勝利しましたが、事前の世論調査でもずっとクリントン氏がリードしているニュースばかりで、カリフォルニアという反トランプ州でもあったことからか、当時周りにもトランプ支持者は少なく、トランプ氏が勝つとはこれっぽっちも考えてもいなかったので、

あのTVリアリティショーの「Apprentice」の主役が大統領になるとは、これまさにリアル・リアリティショー、さすが「エンターテイメントの国」と妙に関心しておりました。

OSAクン
OSAクン

“You’re Fired”ってやつだね・・・

あの衝撃から4年が過ぎ、11月3日(火)の大統領選まで残すところ3週間余りとなりました。 

前回クリントン氏が大統領選挙前の世論調査でリードしていたように、今回も民主党のバイデン氏が現時点ではリードをしていますが、

前回のような、皆が驚くようなトランプ氏の逆転劇があり得るのか?調べてみました。

2020年の大統領選予想

結論から先に言うと、現時点での世論調査の結果と現在の情勢を分析すると、

これから11月3日(火)の投票日までの間に、誰も予期しないことでも起きない限りは、トランプ氏に2016年のようなミラクルは起きず、バイデン氏が大統領選に勝利するでしょう。

大統領選世論調査・分析結果

アメリカにお住まいの方はご存知の方も多いかと思いますが、270toWinという大統領選サイトがあり、各メディアの情報をまとめて大統領選の分析予測をしています。

以下の9つのメディア・調査機関の世論調査と分析結果をまとめて、トランプ氏とバイデン氏の選挙人獲得予測が、Consensus Electoral Mapと呼ばれる両候補者の勢力地図として常にアップデートされています。

10月9日(金)時点の状況をみると、バイデン氏が圧倒的にトランプ氏を上回っています。

Source: 270towin

これに、トランプ氏にとってのベストシナリオのシュミレーションとして、Toss-up (茶色)と情勢が均衡している、まだトランプ氏寄りかバイデン氏寄りかがはっきりしない州であるFL(フロリダ州)、GA(ジョージア州)、NC(ノースカロライナ州)、OH(オハイオ州)、IA(アイオワ州)を全てトランプ氏寄り(ピンクのLeansトランプ)に変更してみました。

それでも、トランプの選挙人獲得数は247と過半数の270に届きません。

さらに、

現時点でバイデン氏がリードしている青色の州から、州毎のデータでそのリードが7.2ポイント以下(何故7.2ポイントを設定したかは後で説明有り)の州を探し、それに該当するAZ(アリゾナ州-3.0ポイント差)とWI(ウィスコンシン州-6.2ポイント差)をピンクのLeansトランプに変更してみました。

しかし、

このような起こる可能性が極めて低いシミュレーションをしても、トランプ氏の選挙人獲得数は268と過半数に及びません。

OSAクン
OSAクン

実際、Swing Statesと呼ばれるArizona, Florida, Georgia, Iowa, Maine, Michigan, Minnesota, Nebraska, Nevada, New Hampshire, North Carolina, Ohio, Pennsylvania, Wisconsinの多くでバイデンが有利のようだし、トランプはかなりピンチだね・・・

それから、

最新の全体支持率においても、270toWinと270toWinと同じようなRealClearPolitics(RCP)という政治サイトが集計・分析たデータをみても、10月9日(金)時点では共にバイデン氏がトランプ氏を10ポイント近くリードしており、その差は更に開きつつあります。

Source: RealClearPolitics
Source: RealClearPolitics

2016年の大統領選前世論調査

でも、「前回もクリントン氏優勢が伝えられていたにもかかわらず、実際はトランプ氏が勝ったし、反トランプが多いメディアの世論調査はあてにならないのでは?」とお考えの方もいるでしょうし、

わたくし自身も今回調査を行うまでは、「何だかんだ言っても、また前回同様トランプ氏が逆転勝利するのでは?」との思いもありました。

RealClearPoliticsによると、2016年のクリントン氏 vs.トランプ氏の大統領選直前の世論調査では、クリントン氏の46.8%に対してトランプ氏は43.6%と、クリントン氏が3.2ポイントリードをしていました。

最終結果はクリントン氏の48.2%に対してトランプ氏が46.1%と、クリントン氏が2.1ポイント差で一般投票では上回り、3.2ポイントリード予想に対しての2.1ポイント差と、その差は僅か1.1ポイントであり、誤差の範囲で一般投票の結果は予想通りであったと言っても良いと思います。

それでは何故トランプ氏が予想に反して勝利したか言うと、Swing Stateと呼ばれる激戦州の事前調査と実際の選挙結果に大きな誤差があったためです。

例えば、

ミシガン州での事前調査ではヒラリー氏が3.6ポイントリードをしていましたが、実際にはトランプ氏が0.3ポイント差で勝利し、事前調査と実際の選挙結果に3.9ポイントの誤差がありました。

ペンシルバニア州ではクリントン氏が2.1ポイントリートしている調査結果でしたが、実際はトランプ氏が0.7ポイント差で勝利し、2.8ポイントの誤差がでました。

一番大きな誤差があったのはウィスコンシン州で、事前調査ではクリントン氏が6.5ポイントと圧倒的有利と伝えられていたにもかかわらず、実際はトランプ氏が0.7ポイント差をつけて勝利し、その誤差は7.2ポイントにもなります
*この7.2ポイントを今回の大統領選予想でも起こり得る最大誤差と仮定し、先のシュミレーションを行いました。

何故このような誤差が生まれたのか?

Pew Research Centerが、2016年大統領選の事前調査での問題点を指摘しています。

大きな原因のひとつは、投票直前になってトランプ氏への投票を決めた人が、Swing Statesのペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州、そしてフロリダ州で多かったため、その数字が事前調査に繁栄されなかったこと。

ふたつめは、前回の調査では大学を卒業していない層の動向を把握し切れておらず、と言うのも高学歴者ほどメディアや調査会社が実施する世論調査に参加する可能性が高く、世論調査の結果が実際の有権者全体の動向を正確に繁栄していなかったとのこと。

OSAクン
OSAクン

何だかとても初歩的なことで、調査会社の言い訳にしか聞こえないね・・・

これらの前回調査の問題点は既に修正されているとのことで、今回の世論調査は前回より精度が高いと考えてよいと思いますが、仮に前回並みの最大7.2%の誤差があり得ると想定して、現在の世論調査のデータをベースに、100%トランプ氏に好都合にシュミレーションをしても、選挙人の過半数獲得に至らず、やはりトランプ氏の勝利の可能性は極めて低いと言えると思います。

本当にトランプ氏にチャンスはないのか?

これらの予想は、現時点での世論調査におけるトランプ氏とバイデン氏の支持率をベースにした予測ですので、この支持率が大きく変動するようなことが起きて、トランプ氏の支持率がバイデン氏を超えるまでいかなくても、大きく近づくようなことがあれば勿論状況は変わります。

しかしながら、

現時点でトランプ氏の支持率が大きく上昇する要素が見つからず、逆に更に下降するリスクさえあります。

BLM問題や中国との関係など、アメリカが現在抱えている問題は数多くありますが、多くのアメリカ人の関心は経済回復とコロナ対策です。

余すところ僅か3週間の間に、トランプ氏は起死回生策を打てるのでしょうか?

新型コロナウィルス追加経済対策

大統領選を睨み共和党と民主党間で、いやトランプ氏と下院議長のペロシ氏との間で凄まじい駆け引きが展開されています。すったもんだの末の民主党の2.2兆ドル(約230兆円)の追加経済対策提案に対して、一度は協議打ち切りを宣言したトランプ氏も、その後の株価急落を見てか急遽方針変換をして、当初の1.6兆ドルから1.8兆ドル (約190兆円)への増額を妥協し民主党へ再提案し、現在協議が再開されています。

トランプ氏は自分がこの追加経済対策を承認し、$1,200のStimulus Check(給付金)を給付するヒーローになり、大統領選前にどちらに投票するか迷っている層をトランプ支持にすることを狙っていますが、ペロシ氏もそうはさせないよう、追加経済対策案で合意に至らないのをお互い相手のせいにして批判を続けています。

どちらも大統領選前に悪者にはなりたくないので、近々2.2兆ドルの民主党案と1.8兆ドルの共和党案の間のどこかで合意する、もし合意に至らない場合は、トランプ氏が大統領令を発動して$1,200の給付金を決めるであろうと推察しています。

しかし、$1,200の給付金は共和党と民主党間で以前に合意していたにもかかわらず、ここ迄給付が遅延したことから、仮に$1,200の給付金が決まっても、

若干のトランプ氏の支持率上昇はあっても、それにより現状を打開する程トランプ支持が大きく伸びることはないと思います。

新型コロナウイルス

トランプ氏のコロナ対応には、民主党からだけでなく、共和党でも民主党支持でもない、いわゆるIndependentと呼ばれる層からも批判が多く、トランプ氏の支持率低迷のひとつの要因となっています。

コロナが収束に向かいワクチンもできれば、トランプ氏の追い風にもなりますが、大統領選迄には少し難しいようです。

そんな中先週の10月2日(金)に、「トランプ夫妻が新型コロナウイルスに感染」というショッキングなニュースが飛び込んできました。

「Commander of Chiefである大統領が、ロールモデルとは真逆のことをしてマスクも付けずにコロナに感染するとは、国民の前でリスク管理に対する意識の低さを完全に露呈し、これで大統領選も終わった」と思いましたが、その話を友人のアメリカ人としたところ、

「コロナから復活する強い大統領を国民にアピールするための絶好の機会で、イギリスのジョンソン首相がそうであったように、復帰後トランプの支持率は上がる筈・・」とのこと。

そんな考え方もあるのかと思い彼の話を聞いていましたが、実際驚く早さでトランプ氏は5日(月)には米軍医療センターを退院しホワイトハウスに戻り、明日11日(日)からは選挙キャンペーンにも戻る予定とも伝えられております。

これからトランプ氏流の反撃・アピール開始なのでしょうが、世論調査を見る限りはバイデン氏優勢は変わらず、逆に差が広りつつあるようで、少なくとも現時点ではトランプ氏のコロナ感染はプラスには働いていないようです。

そして、トランプ氏にとって向かい風となりそうなのが、ここに来て収束とは逆にコロナの感染者が増加傾向で第3波の懸念がでていることです。

Source: CDC

7月後半に1日の新規感染者数が7万5千人とピークを記録した後収まりつつあったコロナですが、再び新規感染者が増え始め、中西部の一部の州では新規感染者数の最高記録を更新し、ニューヨーク州では新規感染者増加から一部の学校閉鎖のニュースも入ってきております。

現在は多くの州で規制が緩和され店舗や学校も再開していますが、10月に入り徐々に寒くなって行く中、それによるコロナ新規感染者の増加が心配されます。

これから大統領選の11月3日(火)までに新規感染者が日増しに増加し、連日コロナに関する悪いニュースが入り、回復しつつあった経済活動もコロナの第3波により再度経済危機に逆戻りの可能性もあり、そうなるとトランプ氏にとって確実に大きなマイナス要素になります。

大統領候補ディベート(討論会)

バイデン氏の優勢が伝えられる中、9月29日(火)にトランプ氏とバイデン氏の第1回目の討論会(ディベート)が、オハイオ州クリーブランドで行われました。

当日都合でLIVEで見ることができなかったのですが、「バイデン氏は高齢だし、またsleepy Joeとか呼ばれてトランプ氏の口撃にやられているのだろうな〜」と結果が気になっていた矢先に、America Lost Tonight」とのニュース見出しをネットで目にしました。

「中身のないディベートで、勝者はいないという意味か?」とは思いましたが、後ほどニュースでディベートを見ましたが、あまりの酷さに閉口しました。

トランプ氏の横暴ぶりは予め予想していましたが、度々口を滑らし非難されることもあるバイデン氏もかなり口が悪く、ディベートというよりは罵り合いに近く、非常に目障り、耳障りなディベートでした。

それゆえに、勝者がいない「America Lost Tonight」であったのでしょうが、その後のニュースなどでは若干バイデン氏優勢の声が多いようで、ディベート後の世論調査でもバイデン氏がリードを広げた結果がでています。

OSAクン
OSAクン

バイデンが勝ったとも到底思えず、本当にどっちもどっちだったよ。
副大統領候補のディベートもそんなに大したことがなかったけど、非常にまともなディベートに見えたね・・・

15日(木)に第2回目の討論会が予定されていますが、トランプ氏のコロナ感染の影響でバーチャルになるとの決定に対して、トランプ氏がバーチャルであれば時間の無駄になるだけなので参加しないと言っており、実際どうなるか分からない状況です。

いずれにしても、第1回目のディベートを見た感想ですが、この2人があと2回ディベート、いやっ口喧嘩をしたところで勝者も敗者もなく、トランプ氏が大きなポイントを上げられることはないでしょう。

2016年のトランプ氏勝利を当てた歴史学者Allan Lichtman(アラン・リットマン)

2016年の大統領選で殆どのメディアがトランプ氏の勝利を予想でできなかった中で、トランプ氏勝利を当て一躍有名になった、American Universityの教授で歴史学者のAllan Lichtman氏ですが、著書のPrediciting the Next President: The Keys to the White Houseにて、今回はバイデン氏勝利を予測しています。

Lichtman氏の大統領選予測モデルですが、独自の13のKeyを使用して、各Keyの内容にYESであればTrue、NOであればFalseとし、Falseが5つ以下であれば現職大統領(現職大統領の政党)、つまりトランプ氏が勝利Falseが6つ以上であれば対抗政党の候補者、バイデン氏が勝利するというものです。

Key#Key(Topic)Threshold Condition(判断基準)評価True or False
1Party Mandate現職が中間選挙で下院で勝利民主党勝利False
2Contest党内のライバル不在党内ライバルなしTrue
3Incumbency現職大統領の再選選挙現職の再選選挙True
4Third Party第3政党或いは独立候補不在他候補なしTrue
5Short-term economy短期的経済後退なしコロナでリセッションFalse
6Long-term economy在職中に経済成長ありコロナでリセッションFalse
7Policy change大きな政策変更あり在職中に政策変更True
8Social unrest大きな社内不安なしコロナ、人種問題False
9Scandal大きなスキャンダルなし大統領弾劾裁判False
10Foreign/military failure大きな外交・軍事政策失敗なし失敗なしTrue
11Foreign/military success大きな外交・軍事政策成功大きな成功なしFalse
12Incumbent charisma現職にカリスマ性あり一部の層のみ限定False
13Challenger charisma対立候補にカリスマ性なしバイデンにもなしTrue
Source: The 13 Keys to the White House by Allan Lichtman

以上のようにFalseが7つあり、つまりトランプにとって不利な内容が多く、Lichtman氏はバイデン氏が勝利すると予測しています。

TrueとFalseの判定はかなり主観的なものもあり、「前回の2016年の大統領選で運良くトランプ勝利を当てたのでは?」とも思いましたが、実は2016年の大統領選だけでなく、この13のKeyを使用して1984年のレーガン氏の大統領選再選から2016年のトランプ氏の大統領当選まで、全ての選挙で完璧に勝者を的中させてきたそうです。

OSAクン
OSAクン

4年前に突如でてきた予想屋ではないようで、今回のバイデン氏の勝利予測の信頼性もかなり高そうだね・・・ 
実はLichtman氏はHarvardで博士号も取得しているんだって。

おわりに

2016年の大統領選でまさかの大統領当選を果たしたトランプ氏ですが、その時の衝撃が大きかっただけに、わたしのように確たる理由もなく今回も同じことが起こるのでは?と感じている人も少なくないと思いますが、

現在バイデン氏が10%近くリードしている世論調査の総合結果をベースとすると、何かミラクルでも起こらない限りは、残り僅か3週間でトランプ氏の支持率がバイデン氏に肉薄するレベルまで上がる可能性は低く、負けなしのLichtman氏の予測も踏まえて、「喜ばしいことに」か「残念なことに」かは分かりませんが、今回はトランプ氏の勝利はないであろう・・と予想しています

OSAクン
OSAクン

トランプ氏のことだから必ず最後に追い込んでくるだろうけど、バイデン氏がギリギリ逃げ切りかな・・・

どちらの候補者が勝利するにしても、選挙後はその結果を素直に受け入れ、コロナ、経済、自然災害、人種、治安、外交など山積みする問題に直ぐに取り組んでくれることを願います。

と願いながらも、選挙後何か不穏なことが起こりそうで心配でなりません。

Stay safe and healthy!